14. 自殺の予防

自殺の予防

自殺が与える影響

    • 自殺は年齢、文化、社会状況、性別、宗教に関係なく、誰にでも影響を与えます。
    • 国の統計によると、アメリカ国内では17分に1人の割合で自殺による死者が出ています。毎年、より多くの国民が、殺人で他者に殺されるより、自分の手で命を断っています。自殺は、アメリカの全大学における死因の第2位、ティーンネージャーにおける死因の第3位に挙げられる他、高齢、中年男性に多く見受けられる死因として挙げられています。
    • 最近の統計で、アメリカ国内におけるアジア人高齢女性の自殺率が、年齢的、人種的に一番高い事がわかりました。
    • ワールドジャーナルの新しい記事(Xu 2006年5月11日号)によると、ニューヨーク市で1年の間に、4人一家と21人の中国からの移民が自殺で命を落としました。
    • 自殺者とどれだけ親しかったかにもよりますが、残された者は、残された傷と、自殺を未然に防ぐ事ができなかったという罪悪感に苛まれて生きて行く事になります。また自殺を図ったものの、一命をとりとめたという場合には、周囲に、いつその個人を失うかしれないという恐れを与え続けます。

なぜ人は自殺をするのか?

自殺の事態を引き起こすには様々な事情があります。精神病(とりわけ鬱病と薬物乱用)が9割以上の自殺例と関連している一方で、社会的、経済的、精神的、文化的等の様々な要因が、ジレンマや人生の苦難に終止符を打つ手段は自殺だけだという個人の考えを悪い方向に増強することもあります。

自殺と関連した危険要因とは?

    • 誰がいつ自殺を図るかという事を予測するのは大変難しいですが、臨床学では、自殺の危険を呼び起こしうる事態や出来事を識別しています。
    • うつ、躁うつ病、他の精神病
    • 離婚、死、健康の喪失、別居、別れ、尊敬の喪失などにみられる、大切な物を失うという事
    • 成功へのプレッシャー
    • 家族問題
    • 自分への自信のなさ
    • 家系の自殺者の有無
    • 親しい者の自殺

個人の幸福が家族の結束や家族から認められることと密接に結びついているアジア系コミュニティーでは、よく家計への援助、学業での成功などの家族への「義務」の遂行ができない事、家族間の不和、愛する者からの排斥などが自殺を引き起こします。家族の重荷になっている、または家族に受け入れられないなどの羞恥心や失敗は、自殺に先立きよく見受けられる強い感情です。

自殺に関する間違った認識

「自殺の話をする人は実際に自殺したりしない」誤解です!

アジア系コミュニティーにおいて、「自分は何の役にも立たない」とか「死んだ方がましだ」などのコメントは、気にしてもらうためのコメントだとよく誤解され、自殺をほのめかすような問題は相手にされない事が多いですが、メンタルヘルスのプロフェッショナルは、自殺した者、また自殺を図ろうとした者のほとんどは端緒を示している、と警告しています。なので、「死にたい」、「自殺したい」などのコメントは、本人がストレス下にある、または自殺を考えている事の現れであり、これらに耳を傾ける事は大変重要になってきます。

「自殺をしようとする人は気がおかしいに違いない」誤解です!

ほとんどの自殺企図者は精神病者や気がふれた人ではありません。アメリカでは、深刻な精神的苦痛で人を苦しめる、衰弱した精神病である「うつ」は自殺企図者の間でとても大きな危険因子と言えます。不幸にも、研究によるとうつはアジア系アメリカ人によく見うけられ、アジア系アメリカ人のうつ病率は白人よりも高くなっています。

「もし本当に自殺する気があるのなら、自殺を防ぐのは不可能だ」誤解です!

深刻なうつ状態の人でさえ、死に関しては、最後まで、死にたいのかそれとも生きていたいのかで揺れ動く混在した感情があります。ほとんどの自殺者は死にたいのではなく、苦痛をとめたいのです。苦難から逃れたいという衝動は、相当強いものでありながらも、長くは続きません。

「自殺をする者は助けを必要としたくない人々である」誤解です!

自殺者の研究は、自殺者の半数以上が自殺までの6ヶ月の間に医者に頼っていることを示しています。アジア系コミュニティーにおいて、多くの移民は言語、文化的な壁の為にメンタルヘルスサービスを是としておらず、サービスに関してもあまり知らない事が多いのですが、研究によると、これらの移民の多くは問題があると、その問題がメンタルヘルスに関する事であってもかかり付けの医者の所へ行くようです。

「自殺の事を話す事で、自殺を助長する事になる?」誤解です!

アジアの文化においては、マイナス思考や負の感情を抑える事が精神的苦痛を和らげる事になると信じられがちです。しかし、これは深刻な精神的苦痛にいる個人にはあてはまりません。自殺企図者に自殺の話をしたからといって、病的な考えを与えたり、余計なストレスを与えたりする事にはなりません。実際は逆で、自殺について率直に話し合うのは大変で不快な事ではありますが、我々ができる最も役立つ事の一つなのです。

自殺の要注意サイン

    • 自殺、死、に関して話す、死の事ばかり考える
    • 望みがない、どうにもできない、無意味だ、などのコメント
    • 突然はしゃぐ、突然おちつく
    • 好きだった事への興味の喪失
    • 学問、仕事の成績が急激に落ちる
    • 大切だと思っている相手先への突然の電話や訪問
    • 整理を始める
    • 大切にしていた物を捨てる
    • 不必要な危険を冒す
    • 薬物使用の増加
    • 家族や友達と疎遠になる

アジア系コミュニティーでは精神的苦痛は、しばしば身体の不調として表れます。例えば頭痛や胸の痛みは悲しみの表れであるといえるし、疲労、疲れは苦痛や失望と関係していると言えます。それ故、繰り返し起こる身体的な不調の裏にある失望や無力感に耳を傾ける事が大切なのです。アジア系メンタルヘルスプロフェッショナルは、多くのアジア系移民が計画性と生産性に重きを置くことをふまえると、計画や仕事に関する活力のなさが、その個人が人生をあきらめてしまっている事の重大な危険信号になりうると言います。

できる事

    • 自殺企図は深刻に受け止めましょう。批判する事なしに相手の話を聞き、心配だと伝えましょう。
    • 率直に質問しましょう。「なぜ人生は生きるに値しない、などと言ったの?具体的な計画はあるの?助けになる人と話す気はある?」
    • あなたが気にかけている事を伝えましょう。
    • 自殺企図者が自傷の手段を持ち合わせていない事を確認して下さい。
    • 自殺企図者を本人の愛する仲間と専門家に引き合わせましょう。

すべきではない事

    • 自殺企図者の心配を自分だけにとどめておかない事
    • 問題を避けたり、軽んじたりする事
    • 自殺企図者を一人にしておかない事
    • 短絡的な解決策を提供しない事
    • 自殺企図者の行動を批判しない事
    • 薬や飲酒を勧めない事
    • カウンセラーの役を担わない事。専門家にゆだねて下さい。自殺の可能性がある者は緊急に医者や精神科医に診てもらう必要があります。自殺願がおさまってからも自殺について考え続ける事があります。

アジア系の文化ではプライバシーの保護が尊重され、暗い感情を露にする事を極端に避け、ジレンマを解決する為の具体的な助言が求められるのが通常なので、上記の提案を実行するのは難しいかもしれません。自殺を考えている人は同時に生きる理由を探していて、自分の苦難を他人に話し、世の中に自分の事を気にかけてくれる人がいると気が付くにつれて、人生を終えたいという欲望は薄れるという事を覚えておいて下さい。アジア系のメンタルヘルスプロフェッショナルによると、文化上信じられている事とは逆に、自殺願望者が他人が自分の話をしっかりと関心をもって聞いてくれていると感じる限りは、通常、精神的苦痛に関して心のうちを話すそうです。

専門家の助けを得るには?

    • 911 にかけ、自殺企図者を病院に入れるように頼みましょう。
    • アジアンライフネット (1-877-990-8585) にかけ、検査や他機関の情報を得ましょう。
    • 自殺企図者に付き添って一番近い病院の緊急病棟に行きましょう。市営区営の病院はビザの有無、保険の有無に関わらず、全ての患者を受け入れる義務があります。また、多くの病院ではアジア系の文化、言語に精通したメンタルヘルスプロフェッショナルが勤務しています。

 

資料:以下からの情報をこの資料で使用しています。
American Association of Suicidology (米国自殺学会)
New York Coalition of Asian American Mental Health
Suicide Awareness Voices of Education (SAVE)
The Samaritans